ウィスラーでMTBをはじめたきっかけ — MTBの始め方
こんにちは、スキーヤーの洋平です。
ウィスラーでスキーのガイドやインストラクターの仕事をしていると、夏は何をしているの?とよく聞かれます。「マウンテンバイク!」と答えると、返ってくるのはこの2つ。
「え、怖くないの?」
「バイク高いしお金かかるよね?」
確かにその通り。「自転車」にしては値段は信じられないほど高く、転んだら最低でも擦り傷はくらいは確実。そんな「エクストリーム」と言われる危なそうなスポーツを、メンタル弱めの自分がなぜ始めたのか。きっかけは、ウィスラーにワーホリで来て初めて迎えた春にさかのぼります。
きっかけはウィスラーの夏
最初の冬が終わり、「夏はどう過ごそうかな。バンフにでも行こうかな」と考えていた時、当時働いていたレストランの同僚やマネージャーに「ようへい!夏は絶対ウィスラーにいた方が楽しいよ」と口を揃えたように言われました。実際、ウィスラーで夏を過ごしてみて、ウィスラーが好きになってカナダ永住を決めたし、夏が好きで住み続けている友人も多いです。
じゃあ、夏もウィスラーで過ごしてみようかなと決めて、さらに「MTB楽しいからやろうよ!」と誘われ、なんとなく楽しそうだなと思ってついていったのが、僕の「一年中、山で遊ぶライフスタイル」の始まりです。
ボロボロのバイクで初ライド

「とりあえずやってみようぜ!」と友だちに誘われ、誰かに譲ってもらった古いバイクでトレイルへ。その古バイクは、サスペンションは錆びて動かないし、ギアも軽くならない。今思えば、形はマウンテンバイクでも中身はただの自転車でした。
当然、登りは全然登れない。木の根っこに引っかかっては押して登り、息を切らしながらなんとかついていく。でも、目の前にはスイスイと登っていく友だちがいて、悔しくて必死にペダルを漕いでいました。
下り坂は教えてもらった通りに体を動かして、スキーのバランス感覚でなんとか乗れていました。そんな中、少し休憩していると、友だちがそこにあった大きい岩の上にバイクを押し上げ、2mちょっとはあるほぼ垂直に見える岩壁からダダダダッと真下に下ってきたんです。その時、何が起きたのか理解する前に「やばい、かっこいい」と思い、その姿は写真こそありませんが、今でも鮮明に記憶に残っています。
そのあとバイクを交換させてもらって本物のマウンテンバイクに乗ったときの衝撃は忘れられません。走破感、スキーのようなスピード感、そして心臓がバクバクするほどの興奮。もっと乗りたい!でも全然ついていけない…その悔しさと楽しさが混じった気持ちが、マウンテンバイクを始めるきっかけになったんです。
中古でMTBを買って走り込む

すぐに自分のバイクを買ったけれど、ワーホリ時代に高いフルサスには手が出せず、中古のクロカンハードテイルを300ドルで購入。今思えば、それが基礎を学ぶのに良かったのかもしれません。
前後にサスペンションがあるフルサスのマウンテンバイクは、トレイルの岩や木の根っこのようなデコボコが多少大きくてもスムーズに乗れてしまいます。ですが、性能に頼りすぎると基礎が身に付きにくいのも事実。ロストレイク周辺の初中級のトレイルを走っては転び、Tシャツを破って擦り傷を作り、タイヤをパンクさせては歩いて帰る。その失敗のたびに「なぜできなかったんだろう」と考えて、MTBを楽しめるくらいに少しずつ上達していったんだと思います。
初めてのバイクパーク体験

次のステップはウィスラーバイクパーク。世界中からウィスラーのバイクパークでMTBを楽しむためにマウンテンバイカーが集まるほど、コースバリエーションが豊富なバイクパークです。ウィスラーのホテルや観光関係の会社向けの体験ツアーでダウンヒルに挑戦する機会があり、すぐに参加を希望。レンタルとガイド付きで人生初のダウンヒルを体験してきました。
レンタルしたバイクは太いタイヤと前後サスペンション付きのダウンヒル専用バイク。プロテクターとフルフェイスヘルメットを着けてリフトに乗り、ブレーキやポジションの基本を習って、いざダウンヒル!
「もう最高!!」。これ以上の言葉は必要ありませんでした。緊張、興奮、走破感、その全部を一度に味わえた。怖さもあったけど、バイクや装備がしっかりしている分、むしろ安定感があり、「こんなにコースがデコボコしてても、こんなスピードで走れるのか!」と感動。
想像を超える楽しさにハマる

正直、この感覚はやってみないとわからなかったと思います。誘われたときに何が楽しいか説明されても、「怖そう」「危なそう」という先入観が勝って、きっとやらなかったはず。でも、実際に体験してみると、その楽しさは想像を超えるもので、間違いなく沼にハマります。
そこでの問題はギアが高いことでしたが、ウィスラーはそのMTB人口から、中古で出回っていて購入しやすいのがラッキーでした。今では数千ドルのバイクを見て、このグレードなら妥当な値段だなと、金銭感覚が狂っています。誘ってくれた友だちの「楽しいからやろう」という言葉は、今思えば甘くて危険な罠だったのかも。
ただ、「怖い、高い、危ない」、そう思っていたけど、それを超える圧倒的な楽しさがありました。今ではすっかりこの沼にハマり、MTBは自分のライフスタイルの一部になっています。
そしてウィスラーは、初心者から楽しめるコースがあり、ギアも揃えやすく、MTBを始めるのにすごく絶好の場所です。ウィスラーでのMTBの始め方をまとめてみましたので、参考にしてみてください。
MTBに必要なもの・揃え方
まずは、MTBの楽しみ方について。MTBにはダウンヒルからクロスカントリーなど、たくさんのカテゴリがあります。説明すると長くなるので、バイクパークでバイクをリフトに乗せて上がりトレイルをひたすら下る「ダウンヒル」と、自分の力で登ってトレイルを下る「トレイルライド」の2つに分けて説明します。

・マウンテンバイクの購入方法
ウィスラーでMTBを初めるなら、まずは中古での購入がお勧めです。(エントリーモデルなら500ドル~1500ドルくらい。)長く乗っていると故障やキズは付きもの。高い新車を買ってすぐに傷ついたら悲しくなります。
中古で買う場合はフェイスブックの「マーケットプレイス」や「Whistler Buy & Sell」、「Whistler Mountain Bike Buy/Sell/Swap」などのグループで探すのが一般的です。ただし、個人売買なので購入してからの故障の保証とかはないので、MTB経験者と一緒に見てもらいましょう。あまりに古いと故障したときの部品がなかったりするので、古くても6~7年前くらいのモデルが安心です。タイヤサイズは29インチが主流です。27.5インチでも楽しめますが、中古で売られているバイクもほとんどが29インチになってきています。
バイクの種類は、ダウンヒルは「ダウンヒル専用」のバイク一択です。サスペンションのトラベル(吸収してくれる大きさ)が大きく、どんなデコボコも乗り越えてくれます。車体も重く安定感があり、下り向けに重心も後ろ寄りなので、下りやすいポジションで乗ることができます。ただ、街乗りではギアが重たすぎるので、通勤などで使う場合は、別に安いバイクの購入がおすすめ。
トレイルライドは、「オールマウンテン」または「エンデューロ」モデルを選びましょう。オールマウンテンよりエンデューロのほうがサスペンションのトラベルが大きく、下り寄りの設計です。どちらも急な坂でも上れるように軽いギア(ローギア)まで装着されています。前後にサスペンションがあるフルサスがお勧めですが、予算がない場合は、フロントのみのハードテイルでもいいです。ただし、トレイルによっては修行です。
「クロスカントリー」モデルは長距離を走るのに特化した、ポジションが前寄りの設計なので、下りを楽しみたいウィスラーのトレイルにはあまり向きません。
・ヘルメットとプロテクターの必要性

ヘルメットやプロテクターも同じくフェイスブックの個人売買での購入が主流です。ただ、ヘルメットは一度強い衝撃を受けると、ヘルメットとして機能がなくなってしまうので、販売者にちゃんと確認しましょう。心配な場合は、ウィスラーブラッコムのクリアランスセンターでも型落ちを購入できます。
ダウンヒルの場合は、あごまで守られている「フルフェイス」が必須です。トレイルライドの場合は、フルフェイスだと重いし登りで息苦しいので、頭部のみの「ハーフヘルメット」が快適です。MTB用のハーフヘルメットは、後頭部のプロテクト部分が大きめになってます。
ハーフヘルメットに顔を守る部分を付けてフルフェイスになるものもあるので、パークも行きたかったりトレイルでも顔まで守りたい場合はおすすめ。
プロテクターは最低でも膝と肘のプロテクターは用意しましょう。ダウンヒルはトレイルよりも速度域が上がるので、しっかり守れるもの。トレイルでは登りの快適さを考えると、D3O(薄手で普段は柔らかいが、衝撃が加わると硬くなるプロテクター)が入っているものがお勧めです。さらに、胸と背中を守れるプロテクターもあったほうが、もし何かに衝突したときにも安心です。ジャンプトレイルに挑戦したい方は、ネックブレースを付けると首の脊椎の損傷が軽減されます。
どれも100%守られるわけではないので、なによりのプロテクターは安全第一に乗ることです。(ただ、守りすぎても上手くいかないのがMTBの面白いところ)
・バッグ・修理キットで備えよう
ダウンヒルの場合は、バイクパークのリフト駅舎付近にアランキー(六角)などのツールが設置されていたり、乗れなくなっても最悪林道を歩いて下ってこれる距離なので、何も持っていなくても大丈夫です。上着などは、ウィスラーのフィッツシモンズリフトの乗り場には、バイカー用に荷物置きが用意されているので、自分のバックパックに入れて置いておけます。
ただ、パンク程度で歩くのが嫌な方は、チューブとポンプを車体に付けておけば、どこでも対応できるので、それくらいは持っておいてもいいでしょう。サドルバッグは、乗っている間にリアタイヤに干渉する場合もあるので、干渉しないか必ず確認しましょう。
トレイルライドの場合は、走行する距離により持っていくものも変わってきます。バイクパークのようにリフトがある一定のエリアで乗るわけではないので、遠くに行けば行くほど、トラブルがあったときに帰ってくるのが大変になります。なので、トレイルを走っててどんなトラブルが起きるかを予想して持ち物を判断しましょう。
短い距離で歩いても帰ってこれる距離であれば、ダウンヒルと同じように、パンク修理キットやボルトの緩みなどに対応できるマルチツールがあればOKです。それに加えて、天候に対応できるジャケットや、水分、エナジーバーなど、体力を維持できるような準備も忘れずにしていきましょう。
僕は、普段トレイルを走るときは、ヒップバッグを使っています。ハイドレーション付きのもあるので、登りながら水を飲むのも簡単です。
・服装は何でもいいの?

最初は動きやすい服なら何でもいいですが、MTB用のシャツやパンツは伸縮性があったり速乾性があったり、転んでも破けないように丈夫に作られています。ウィスラーブラッコムのクリアランスセンターで購入できます。
グローブは好き嫌いがありますが、転倒時に手を着いたときのけが防止や、振動による疲れを軽減してくれるので、僕はグローブを付けています。
靴はバイク用を購入するのがおすすめです。MTBでダウンヒルをするときは、ペダルに立ち乗りになります。もしペダルから足が滑ったりして外れてしまうと、転倒してケガにつながります。MTB用の靴はペダルの滑り止めにフィットするようなゴムやソールパターンで作られているので、最低でもバイクシューズはあったほうがいいです。シューズもクリアランスセンターで購入できます。
・バイクパークパス・チケットの購入
バイクパークでダウンヒルを楽しむならシーズンパスやチケットが不可欠です。シーズンパスには、無制限とトワイライトという2種類があり、トワイライトは夕方以降のみ利用できるので、日中仕事をしている人向けのパスです。他にも、1~4日間の日数券や、2 Days、5 Days、10 DaysなどのDayパスもあります。旅行の場合は、連日利用なので日数券でいいですが、ワーホリなど長期で滞在する場合はシーズン中使えるDayパスやシーズンパスを選びましょう。
・トレイルは「Trail Forks」という地図アプリで検索
トレイル探しは「Trail Forks」という地図アプリを使用しています。バイクパークはもちろん、それ以外のバイクトレイルが地図上に載っているので、トレイルへのアクセスルートなど、簡単に調べられます。初級からエキスパートまでのトレイルが載っていて、GPSもついてトラッキングもできる高機能。無料版でも十分トレイルマップとして使えます。
ちなみに、アプリは当初、バンクーバーのバイカーによってバイクトレイル専用に制作されたものですが、今ではハイキングやトレラン、バックカントリーやモトクロスなどなど、様々なアクティビティのトレイルも載っています。
・車とバイクラック or ピックアップトラックがあると幅が広がる
ウィスラーのバイクトレイルはビレッジからバイクでアクセスできるので、必要というわけではありません。バレートレイル(歩行者やバイカー、スケーター用の舗装されたトレイル)ですべてのエリアが繋がっていますし、バスにも2台まで乗せることができます。
ペンバートンやスコーミッシュなど、他のエリアにもたくさんの楽しいバイクトレイルがあるので、車にバイクラックを付けたり、ピックアップトラックに載せたり、移動手段があるとさらに楽しめます。
ウィスラーはMTB初心者からプロまで楽しめる天国
僕がゼロからMTBを始めたように、ウィスラーはMTB初心者にとって全てが揃っている場所です。キッズ向けや女性向けのレッスンプログラムがあったりと、誰でも楽しめる環境です。もちろん、SNSでライダーがウィスラーので撮影した映像をアップしているように、プロが楽しんでいる場所でもあり、老若男女レベル問わず、夏のウィスラーはマウンテンバイカーで溢れています。
ワーホリで夏の予定が決まっていなかったら、「ウィスラーの夏は最高だよ!MTBやろうよ!」という言葉に騙されてみてください☺そして仲間がいればいるほど、さらに楽しくなります!是非一緒に乗りましょう!
