僕にとっての贅沢さとは。


さて僕がこの町に住みだしてから気づいた特別なところ、それは「日常生活圏内にアウトドアがある」
ということだ。そのことに気づいてから、周囲の環境に対して感謝を強く感じることが増えたように思う。

スコーミッシュでは5〜10分もあればの何かしらのアウトドアへとアクセスできる。
自分の日常生活圏内にアウトドアフィールドがある人いう生活は、仕事の終わりに近所の公園に行く感覚で岩場に通うことができ、前日からの準備も必要ない。

そしてそんな気軽なアクセスの先に待っているのは、こどもたちがワイワイと楽しんでいるようなルートから、超一流のクライマーが何年も挑戦し続けているようなルートまで、とても幅広いラインナップをほこる岩場なのだ。

身近でありつつ、冒険的でもある裏庭。僕にとってはこれが「贅沢」と呼ばずなんと言えるだろうか。

正直に書くが、僕が東京に住んでいる時はよくクライミングジムに通ったり、たまに井の頭公園を歩いたり、仕事終わりは渋谷で飲み歩いていた。(日本的な飲み歩きは本当に恋しい..)そして、休日には長野や山梨、愛知、群馬、新潟へとクライミングやスノーボードに出かけていた。

それはひとつの充実したライフスタイルだったのだけど、「休日こそアウトドアに行かなければ行けない!」というプレッシャーを、心の奥の方では実は少し感じていたように思う。正直に書いて。


今は逆に、日常的にアウトドアを楽しめているのなら、休日は何をしてもいいや、とより自由を感じるようになった。僕にとっての豊かさとか、贅沢とか、優先順位がはっきりしたのは大きかった。
(もちろん、休日にアウトドアの計画をするも楽しいのだが。)



ここでさらに気づく。
例えば、サーフィンを愛するがために海の近くに住むサーファー。
そういった海のリズムとともに暮らすことを好むサーファーのライフスタイルは、
まさにこの日常と自然が融合したライフスタイルだ。

では冬の間はなるべくスキー場の近くに住むことにしているスノーバムたち、仕事の終わりに皇居の周りをランニングするランナーはどうだろう?

もしくは、漫才が好きで大阪に住んでいる人、演劇が好きでニューヨークに住んでいるあの人は?

実はみんな、同じように「好きなフィールドが近い」という条件を満たしている。
僕はここまで「スコーミッシュがいかにアウトドアに没頭でき、僕にとって夢のようなライフスタイルを送ることができるのか」ということにフォーカスして考えてきたが、視点や好みを少し変えると、実は色々な場所でもこのようなライフスタイルを送っている人がいる。

ということは単に場所が大切なのではなく、場所の何が大切なのだろう?


「ハレ」と「ケ」?  日常の中に非日常を持つ大切さを学ぶ。

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スコーミッシュへようこそ。チーフ(左)とハウサウンド(右)が出迎えてくれ る。ちなみに写真では奥側にバンクーバーがある。


今の僕なりに、その気づきを表現するなら
「日常の中に非日常の時間を持つこと」ということができそうだ。
昔からある日本の言葉を使うなら、1日の中に「ハレ」と「ケ」を持つこととも言えるかもしれない。

「日常の中に(自分の愛することを通して)非日常の時間を持つ」ということだ。

そして「アウトドア」を「自分の愛すること」に置き換えれば、自分の工夫次第でどこでも同じように非日常を作り出せるということがわかる。(試しにひとつ前の章の「アウトドア」という言葉を「自分の愛すること」に置き換えて読んでみてほしい)


なんかややこしく書いてしまったが、
要するに、僕にとっては朝一番で森の中でボルダリングしたり、綺麗に整ったグルーミングの上をスノーボードで流してから、仕事に行くのは本当に気持ちがよく、人生を間違いなく豊かにしてくれるのだ。

そういった日は、一日を通して心の中にワクワクの残り火を感じたり、カラダから感じる心地よい疲労感から充実感が続くものだ。同じように時間を作って森の中にランニングにいったり、仕事の後に湖で泳いだりすることも、それに似た感覚を僕にくれる。

少しの工夫と労力を要して、日常からふと逸れるその先に、
その労力を十分に超えるご褒美がまっていることを僕たちは経験を通して知っているはずだ。
そんな自分にとっての非日常がある場所が大切なのだ。

普段暮らしていると、時に仕事や家庭で忙しくするときもある。理由もなく気分が落ち込むことや、孤独を感じる時もあるだろう。とくに今はなおさらのことに。

そんな時はあえてルーティーンから逸れてみよう。
そしてそれは、さっき気づいたようにアウトドアじゃくてもいい。単純に本を読むことや、いつもは作らない料理に挑戦してみたり、いつもと違う道を歩いてみるだけでもいいのだ。

試しに目を閉じて想像して見る。
朝早く起きて渋谷のヨガスタジオに向かう自分、紅葉の代々木公園公園の中を歩いたり、
1時間早起きして、前から気になっていたコーヒー屋さんから1日を始める自分をー。
そこにはワクワクを感じとる僕がいる。あくまでもぼくの場合はだけど。

大事なのは生き方。でも同時にこの場所に住んだことであらためてそのことに気づかせてくれた。
生き方と場所の永遠の関係性。

そんなスコーミッシュにはいつも感謝しかない。というわけで、今日は早めにベッドにはいろう。
明日は朝一の綺麗なピステンが僕を待っている。

明けない夜はないのだ。

おしまい